キリストに倣いて(3.55.4 本性の腐敗と神の恩恵の効力とのこと)

 ああ主よ、よいことを始め、これを進め、これをしとげるには、主の恩恵がどれほど私に必要でしょう。

 それがなければ、私は何をすることもできません。しかし主の恩恵に強められると、主によっていっさいのことをなし得るのであります。

 ああ真に天来の恩恵なるかな!これがなくては、私たちに自分の功績というものもなく、また本性に与えられた才能も少しも価値がないのであります。

 ああ主よ、恩恵がなくては、いかなる技術も富も、美も力も、知恵も雄弁も、主に対してなんの価値もないのであります。

 本性に与えられたものは、善人も悪人もともにこれをもっております。しかし恩恵、すなわち神の愛は、ただ選まれた人々にだけ特別に与えられるものであって、この印を有する人は、永遠の生命を受けるに足る者とされるのであります。

 この恩恵ははなはだすぐれていて、預言の賜物も奇跡を行なうことも、またいかに高尚な思索も、これがなければなんの価値もないほどであります。

 なおまた信徳も、望徳も、その他いかなる徳も、愛徳と恩恵がなくては、主の聖意に適わないのであります。