キリストに倣いて(3.53.2 神の恩恵は、地上の物を味わう人に与えられぬこと)

 ああ、この世の何物にも愛着していない人は、臨終に際していかに大なる安心があるだろう!

 しかし弱い人は、まだかようにまったくすべての物から離脱した心になることができないし、また肉的な人には霊的な人の自由がわからない。

 けれども、ほんとうに霊的になりたいと思うならば、遠い者も近い者も共に捨てて、何よりも自分に用心しなければならぬ。

 もしまったく自分に勝つことができたならば、その他のあらゆる物を征服することはもっとたやすいだろう。

 完全な勝利とは、自分に勝つことである。

 なんとなれば、自分を征服して、肉欲は理性に、理性は何事につけわたしに、従うようにした人は、これこそほんとうに自分に勝利を得た者で、世界の君主であるからである。